What's New

2012.11.01 マンション管理費見直しセンターのホームページを公開しました。

Twitter

30年暮らした東京を離れ、階段100段登った先の小さな平屋で暮らしています【脱都会。野ざらし荘だより#1】

イギリス生まれ東京育ちの私が、30数年暮らした東京を離れ、神奈川県の横須賀に移り住んだのが5年前。階段を100段登ったところにぼつんと取り残されたようにある小さな平屋の一軒家を「野ざらし荘」と名付け、暮らし始めました。 東京湾の入り口に位置し、江戸時代から軍港都市として栄えた横須賀。今でもアメリカ海軍の基地があるため、駅周辺は外国人が行き交い異国情緒が漂います。 野ざらし荘は駅から歩ける距離にあって、田舎と呼べるほど田舎でもないのですが、辺鄙な立地と階段の多さに訪れた友人の中には我が家を“横須賀のチベット”や“天空の城”という人もいるくらい人里離れた雰囲気を醸し出し、誰が植えたのか分からない木々が生い茂る野趣あふれる家なのです。 現在はここに越してから出会った夫と2歳になる子どもを育てながら毎日の暮らしを楽しんでいます。車で少し走れば海があり、山もある自然豊かな三浦半島の片隅での日々の暮らしを綴っていけたらと思います。

 

「野ざらし」な家に一目惚れ

 

東京では大学卒業をきっかけに実家を出て、学生街を転々としていました。味のある食堂や古書店がひしめき合う下町の街並みが好きで気ままな一人暮らしを送っていましたが、畑に通って自分で農作物を作ったり、花を扱う仕事をするようになってワンルームのアパートでは何をするにも手狭に感じて、庭のある家に住みたいと思うようになりました。 幼少期を庭付きの家が立ち並ぶイギリスの郊外で過ごし、庭で当たり前のようにお茶をしたり、庭の池で遊んでいた記憶がどこかで呼び覚まされたのかもしれません。 そんなことをなんとなく思いながら、ある日ネットサーフィンしていると、たまたま目に飛び込んできたのが横須賀の「改装できる物件」でした。横須賀は一度も訪れたこともない、縁もゆかりもない土地でしたが、理想的な間取りと、自分で好きなように改装できるという条件に惹かれました。

 

母屋とは別に“離れ”があり、中庭もあって、大きすぎず小さすぎず。防音室まで付いていたのは謎ですが、いろんな可能性を秘めた物件にむくむくと妄想は膨らんだのでした。

 

母屋は人が出入りするオープンな場所にして、離れは自分の暮らす拠点にして、と間取りから自ずと自分の暮らし方のようなものが導かれていったような気がします。 家賃は東京の学生街でワンルームの一人暮らしをしていた時とさほど変わらず、電車に乗れば都内まで1時間ちょっとというのも大きな魅力でした。物件情報を見た次の日には不動産屋に電話し、翌週には物件を見に現地に向かっていました。

 

汗ばむ陽気の中、友人と夏休みの子どものようにコンビニで買ったアイスクリームを舐めながら急坂を登り、さらに100段の階段を登りきったところにある一軒家にたどり着きました。門から家まで延びる道の両脇には背丈ほどある草むらがザワワと揺れ、その風景がまるで沖縄みたいで心が踊りました。 家は高台で隣接するマンションの4階部分とちょうど同じ高さ。見晴らしが良く、四方から吹き抜ける風が気持ちよい場所でした。ペンキが剥がれ、屋根も所々傷んではいましたが暮らしながら直していけばよいか、とすっかりこの家が気に入り、すぐにここに暮らすことを決意しました。一人で暮らす不安は、楽しさの方が優って、全くと言っていいほどありませんでした。

 

引っ越し当日は土砂降りの雨!初日から百段の階段の洗礼…

 

引っ越し当日はあいにくの土砂降りで、しかも友人が借りてきてくれた2tトラックがまさかの屋根なし。ブルーシートをかけたら穴が空いていて余計に水が溜まって家具やダンボールはびしょ濡れになりました。 雨の中、傘もさせず、雨に晒され手に抱えてたダンボールは半ば崩壊寸前。溶け出す前に家に投げ入れるという状態でした。追い討ちをかけて100段の階段の往復で足はプルプルと痙攣し始めていました。手伝ってくれた仲間たちと最後は声にならない雄叫びを上げながら何とか最後の荷物を運びきりました。 一人暮らしの引っ越しとはいえ、膨大な量の本と梅酒やら梅干しやらの瓶詰めの数が尋常ではなかったのです。全ての荷物を運び終えたときの達成感といったら、ずぶ濡れになりながら百キロマラソンを完走したのに等しく、肩からはもうもうと湯気が立っていました。 すぐにでもシャワーを浴びてさっぱりしたかったのですが、ガスが壊れていてまだ風呂も使える状態ではなかったので、濡れ鼠のまま横須賀の街まで下りて銭湯で汗を流しました。横須賀名物のカレーを食べて、付け合せの牛乳で乾杯し、ようやく息を吹き返したのでした。

 

濡れた本が乾くのに2週間!海が近い街ならではの苦悩を知る…

 

引っ越してから知ったのですが、ここは海が近いので湿気が多く、雨に濡れた本は乾くのに2週間近くかかりました。革靴はカビが生えて思い切って全部捨てました。しばらく人が住んでいなかったため、蟻やダンゴムシの方が多くて、虫とともに暮らす日々。起きたら布団の周りに数百匹のダンゴムシがうごめいていたということもありました。

 

鳥の鳴き声で起こされ、庭で日向ぼっこをする生活に

 

自然が近い土地ならではの洗礼を受けながら、小さいとはいえ、2軒ある平屋での一人暮らしをしみじみと噛み締めながら暮らしていました。鳥の鳴き声で起こされ、日差しが差し込む庭でぼーっと日向ぼっこしているうちに1日が経っていたなんてことも一度や二度ではありません。柿仕事をしたり、庭で朝食をとったり。

 

夜には星がよく見えました。改装に取り掛かろうと思いながらあっという間に半年が過ぎていました。野ざらしな暮らしが段々と板についてきました。

 

来る人が我が家に来てショックを受けないように、とあえて「野ざらし荘」という名をつけてみましたが、一度訪れた人は何だか妙にその名前に納得して帰っていくのでした。

 

【著者】

清土奈々子

 

階段100段を登った高台の一軒家「野ざらし荘」に夫と2歳の子と暮らす。編集・ライター、ギャラリー「野ざらし荘」運営、子ども向けワークショップのコーディネーター、絵描きのtoiとともにユニット「村のバザール」を組みライブイベントの企画やウェディング装飾、デザインワークなど行う。ミュージックビデオなど映像制作も。 youtube| https://www.youtube.com/channel/UCkAE6Jcy6oSlJxD2nUIu32Q webshop| nozarashisou.handcrafted.jp/

 

清土奈々子

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/e159dbbff6c397afc4f72ab2a9fed24252e17a6b?page=1