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2012.11.01 マンション管理費見直しセンターのホームページを公開しました。

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相続人がいない、管理費滞納…、老朽化マンションの負動産地獄

新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産を通して日本経済を知るヒントをお届けします。

 

管理費・修繕積立金の滞納マンションが増加

 

高齢者の単身世帯が激増している。 マンションにおける高齢者の単身世帯数については正確なデータが存在しないが、2013年度に実施された国土交通省の「マンション総合調査」によれば、東京都内のマンション世帯主のうち、70歳以上が世帯主である住戸が2割、50歳以上が7割を占める。現在では当然、事態はさらに深刻だろう。こうした現状からは、今後多くのマンション住戸が相続の対象となってくることが、容易に想像される。 かつては、親が子に残す財産で最も価値の高いもののひとつが自宅だった。不動産は財産としての価値が高い。つまり、相続人が「住む」こともできれば、人に「貸す」こともできる。最後には「売る」ことで現金にも換えられるということで、相続人の間ではこの親の残した自宅の相続をめぐって醜いトラブル=「争続」問題が生じていた。 ところが、最近はやや状況が異なるようだ。都心居住が主流となる中、親の自宅を相続しても、自身で「住む」つもりはない。賃貸に出しても、築年数が経過したマンションでは住宅設備は古く、部屋の内装も時代遅れでなかなか借り手がつかない。かなりのお金をかけてリニューアルしても、立地に劣るマンションになると、満足な賃料で貸せるケースは少なくなっている。賃貸住宅の空き家は東京都内だけでもなんと59万8000戸も存在することが、この状況を物語っている。 親の残した自宅の不動産価値がそれほどでもないことに気づき始めた相続人たちは、むしろ現金や株式を優先し、不動産を敬遠して相続人同士で押し付けあうような場面も増えているという。 こうした状況で相続したマンション住戸。管理上でもやっかいな問題を引き起こしている。相続人がマンション住戸を相続したことを管理組合に連絡をしないケースが、増えているのだ。 親のマンション住戸を相続はしたものの、部屋内の片付けだけでも一苦労。住戸は傷みが激しく、賃貸するとしても相当額のリニューアル費用がかかる。ただでさえ欲しくもなかった住戸を無理やり相続した相続人は、その事実を告げずに放置、結果として管理費・修繕積立金が滞納となるのだ。

 

相続人がいない「おひとり様」マンション急増中

 

通常であれば管理組合は、相続人が確認できれば、当然のこととして相続人に対して管理費・修繕積立金の請求を行なうことになる。ところが相続人としての届け出が行なわれておらず、どこに請求してよいのかわからなくなるケースが発生しているのだ。 相続人を見つけ出して、滞納分を請求できても、相続人が外国住まいであったり、相続人が複数存在するとなると、各相続人間の共有財産ということでコミュニケーションが取れずに、なかなか思うように徴収できないケースも増えている。 首都圏郊外のあるマンション管理会社の社員は、最近の事情を次のように話す。 「最近は相続人の方をつきとめても、本人にマンションを継ごうという意識がさらさらありません。中には『困っているなら差し押さえでもして売ってくださいよ』と言ってくる人までいる始末です」 この相続人が言うように、最終的にはマンション住戸を差し押さえたうえで、競売等にかけて滞納分を回収していくというのが法律上の手続きとなるが、時代環境は変化している。 以前であれば、流通市場に出せば確実に売却できたマンションも、立地や築年数、設備の状況などによってはまったく買い手がつかないケースも出始めている。競売によって確実に滞納金が回収できるという保証は、どこにもない。 管理費の滞納が300万円、住戸内の後片付け費用で100万円、リニューアル費用で300万円、管理組合で計700万円かけて売却に出したものの、売れない。最終的に売却できた金額は400万円だったなどという事例も、珍しいことではなくなっている。差し押さえるための手続き、弁護士費用なども組合員から集めた管理費しか元手がない中、管理組合もおいそれと手が出しにくいというのが現状だ。 さらに問題がやっかいになってくるのが、相続人がいないマンション住戸の増加だ。「おひとり様」があたりまえになってきた日本社会。少子高齢化の進行は核家族どころか結婚をしない、兄弟、身寄りのない単身者の増加を招いている。こうした区分所有者に相続が発生すると、相続人がいないということになる。

 

マンションはスラム化への道を歩むのか

 

相続人が存在しない、または相続人が全員相続を放棄した場合、マンション管理は家庭裁判所等が選定する相続財産管理人と対峙することとなる。つまり管理費・修繕積立金等の請求を、相続財産管理人に対して行なうこととなるのだ。通常、相続財産管理人を選定する場合は東京地裁などの場合、100万円ほどの予納金を納付しなければならない。相続財産からあらかじめ差し引ければよいのだが、該当金額を引当できない場合はやはり管理組合の負担となる。

 

このような住戸は最終的には売却することによって現金化することとなるが、現実は予納金すら回収できないケースも見受けられるのだ。

 

こうした事態に対して、市場性がないのであれば無理に売却せずに、国庫に入れて国から管理費・修繕積立金を徴収すればよいという人もいるが、国が国庫として取ることは事実上ない。仮に国庫に帰属させたとしても法律上、国は「特定承継人」ではないので管理費・修繕積立金等を支払う義務はないということになる。 管理費・修繕積立金の滞納が多いマンションほど老朽化が激しく、市場における流通性に欠ける物件が多くなる。そうした住戸ほど誰も相続をしたがらない。相続を放棄する、相続をしても住戸を放置し、管理費・修繕積立金の支払いを免れつづける。売却しても債務全額の回収には程遠く、そもそも売却すら叶わない、こんな物件が今後急速に増加してくる可能性が高くなっているのだ。

 

マンション永住化などというが、世代を跨いで価値が持続できない多くのマンションが、今後スラム化への道を歩む可能性が高いはずだ。そんなマンションに資産価値を求める現代人は、マンションというあやふやな共同体の持続可能性をよく見極めるべきなのだ。

 

牧野 知弘

 

オラガ総研 代表取締役

 

牧野 知弘

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/34f60ddea552f62681a4124119bedb5e442a3ce7?page=1