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2012.11.01 マンション管理費見直しセンターのホームページを公開しました。

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急増する「マンション墓」を安易に選んではいけない理由

新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産を通して日本経済を知るヒントをお届けします。

 

高齢化社会ニッポンは年間40万人の純減

 

毎年、お盆の季節はふるさとに帰省する客で鉄道や飛行機、高速道路などが混雑する光景が「お決まり」の映像としてメディアを賑わせる。 お盆のそもそもの目的は、先祖のお墓にお参りして、その霊をなぐさめるところにある。帰省客のどれだけが、実際に墓参りを行なっているかはわからない。どちらかといえば地方出身者は、墓参りとは別に、親戚への挨拶や卒業した学校の同級生が集まって、互いの状況を語り合う場になっているのが実態かもしれない。 理由はともあれ、人間誰しもが亡くなれば入居するのが墓である。 日本の人口は、2015年の国勢調査で初めて減少に向かっていることが発表された。人口が減少する理由は、生まれる赤ちゃんの数より亡くなる人の数が多い、つまり「人口の自然減」の状態に日本があることを示している。 2017年の出生数は94万1000人だったのに対して、死亡者数は134万4000人。なんと日本は、人口の自然増減においては年間で40万人もの純減を記録している。 実際の日本の総人口は22万人ほどの減少と発表されているが、この差は在留外国人の数が急激に伸びているからである。今や日本の人口減を一生懸命外国人在留者の伸びという「社会増」で補っているというのが現代日本の姿なのである。 さて、日本は高齢化社会に突入したといわれているが、この影響は今後死亡者数の激増という形で社会にさまざまな問題を投げかけてくる。1966年(昭和41年)の日本の死亡者数は67万人と戦後最低を記録している。当時の日本は、戦後生まれの男女が世の中を闊歩する若々しい社会だったのだ。 それがこの50年間で、死亡者数は倍増したことになる。医療施設が整い、高齢者施設が数多く建設され、長寿社会が実現したとはいえ、人間、いつかは死ぬ。そしてこれからの日本は「死ぬ」可能性の高い人が激増する状況にあるのだ。

 

墓もマンションのようにみんなで住む時代

 

厚生労働省の予測によれば、2040年には死亡者数は166万人と今よりさらに24%も増加するとしている。それもそのはずである。2017年9月、厚生労働省の発表によれば、現在国内では80歳以上の人口が1002万人。対前年比で 38万人の増加となり、初めて1000万人の大台を超えたという。さらに90歳以上の人口は206万人、100歳以上の人口でも6万7000人となっている。どんなに長寿社会になるからといっても、この数値だけから判断して今後20年くらいの間で1000万人近くの人が亡くなっていくことは、誰が見ても明らかだからだ。 いっぽう現在、日本の人口の約3分の1が東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で構成される首都圏に集中している。つまり、今後は首都圏での死亡者数が激増することが、容易に予測できる。ところが、首都圏で墓地として提供できる土地は少ないのが実態だ。 墓を持つ側のニーズにも変化が表われている。墓地といえば、これまでは地方の実家の周りにある、あるいは郊外の山などを造成して開発した霊園に多く存在したが、こうした施設に対する不満も多い。年に数回の墓参りに行くにも遠くて交通利便性に欠ける、墓参り時の天候に影響を受ける、墓の清掃や雑草取りなど手間暇がかかる、土地使用料や墓石代などの費用が高いなどといった理由が挙げられている。何事にも合理的に考える世代が台頭していく中で、既存の施設に対する不満が高まっているのである。 このような状況を反映して現在人気なのが、墓ビルである。墓地の形態をとらずに建物の中に収容をする納骨堂は何も今に始まったものではないが、最近増加しているのが、ビルを建てるか既存のオフィスビルやマンションを改装して、建物全体をお墓の収用場所にしようというものだ。墓もマンションのようにみんなで「一緒に住む」という時代になったのだ。 墓ビルではハイテク化も進んでいる。以前は建物内に棚を設(しつら)えて骨壺などを並べるだけの簡素なものだったのが、機械化され参拝者は決められたブースに来てICカードで登録番号を読み取ってもらい、該当する塔婆などの一式が目の前に出現するのを待つ。まるで銀行の貸金庫室に行って自分の金庫を取り出すような感覚だ。線香などもあらかじめ備わっているので、手ぶらで参っても大丈夫。何事も手軽に済ませられることも人気の秘密になっている。 費用も墓地であると区画にもよるが、墓石などを含めるとなんやかんやで200万円から300万円程度はかかってしまうが、自動式納骨堂であれば100万円程度。永代使用権や永代供養なども含まれているものが多いので安上がりである。 また近年は少子化が進み、「おひとりさま」需要も増える中、墓守をする後継者がいない人にとっても負担が少ないといえそうだ。

 

墓ビルがスラム化してお化け屋敷に?

 

さて一見すると良いことずくめの墓ビルであるが、実は多くの問題を抱えている。墓地は土地の中に収容されるスタイルであることから、土地が永遠に存続する限りにおいては墓としても永久に存続していくことが前提となる。ところが建物内に収まっている墓ビルは、当たり前のことだが、建物は「永久不滅」でないということを考えなくてはならない。

 

墓ビルは建物内を自動化して収容力を高めている。中には1棟で1万基もの収容力を持つビルまであるという。1基100万円だとして1万基で100億円にもなるのだから、おいしいビジネスともいえる。だがこれらも「満杯」になった後はひたすら「管理」していくことが必要になる。一般的には管理費などを徴求する形をとっているが、さて管理費はいつまで取ることができるのだろうか。最初に永代供養としてまとまった費用を徴求できたとしても墓守は永遠である。

 

建物は「有限」であることから、当然のことだが大規模修繕も必要になる。50年、60年先には「建て替え」も必要となるかもしれない。そのときこうした費用はどこから出ていくのだろうか。墓ビルに対しては宗教法人施設の敷地内限定とする、あるいは宗教法人が一定以上関与する法人の所有に限定するなど、規制を施す自治体もあるが、どのようにして建物を維持管理していくのか、まだ不透明な部分も多いのが実態だ。

 

維持費用が途絶え、誰も管理せず、放置されるような墓ビルが将来都内のあちこちに出現したらどうなるのだろうか。墓ビルが「スラム化」してお化け屋敷になるなどという笑えない話にもなりかねないのだ。永遠に存続することができない器に「永久に存在するはずの」お墓を管理していくことの矛盾に、まだ多くの墓ビルが気づいていないのだ。

 

牧野 知弘 オラガ総研 代表取締役

 

牧野 知弘

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/207c56523b51e18d89425958dd45f4f60e563422?page=1