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2012.11.01 マンション管理費見直しセンターのホームページを公開しました。

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理想のマンション「何駅」郊外に行けば買えるか

 コロナ禍は「家」に関する価値観を変えるといわれている。背景にあるのが在宅勤務の普及だ。パーソル総合研究所によれば、緊急事態宣言後のテレワーク実施率は全国平均で25.7%。東京都に限れば41.1%に達した。現在でも出社人数を制限して、社員を交代で出勤させる企業は少なくない。

 

日中は働きに出て、自宅は寝に帰るだけ。コロナ以前にそんな働き方をしていた人が急に在宅勤務を余儀なくされると、リビングが狭い、仕事をするための書斎が欲しいといった「不満」に気づいた人も多いだろう。

 

 

■広さを求めて郊外に目を向ける

 

だが、限られた予算で広い部屋を求めるには、地価の安い郊外へと目を向けざるをえない。では、具体的に今住んでいる駅より「何駅」都心から離れれば理想の広さが手に入るのか。 リクルート住まいカンパニーの調査によれば、2019年の新築マンション購入者の平均価格は5517万円で、住戸の面積は68.2㎡。今回は理想の広さを80㎡と仮定し、その住戸を5517万円で購入するためには、どれぐらい都心から離れる必要があるのかを調べた。

 

データは不動産調査会社の東京カンテイの協力を得て、駅ごとの㎡当たりのマンション価格を算定。新築マンションは2019年1月~12月に分譲された住戸、中古マンションは2019年1月~12月に流通した築9~11年の住戸を対象に集計している。いずれも最寄り駅から徒歩20分以内の物件が対象(バス便除く)で、専有面積30㎡未満の住戸やオフィス・店舗区画は含んでいない。

 

なお、昨今は新築マンションの供給が少なく、中古マンションも取引事例が少ないなどの理由で、十分なデータが集まらなかった駅も多かった。そこで、東京カンテイのデータに含まれていない駅については、6月中旬時点で価格を公表している分譲中の新築物件、およびポータルサイトにて売り出し中で築9~11年の中古物件を独自に集計した。サンプル数が少ないことを考慮し、あくまで参考価格として「※」マークを付加している。

 

コロナ禍で広い住戸が求められる時代には、どんなマンションが検討に値するのか。早速見ていこう。

 

「地価の安い郊外に行かないと広い住戸が買えない」という現実が如実に表れたのが小田急小田原線だ。68.2㎡の場合、新宿から出発して代々木上原や下北沢といった人気エリアを経て、最初に予算内に収まるのが新宿から14駅を数えた喜多見だ。なお、参考価格ではあるが、経堂駅から徒歩10分の「ザ・グラント経堂」では、71.54㎡の住戸が5280万円で販売されており、こちらも手が届きそうだ。

 

表では68.2㎡の新築住戸の価格が予算内(平均購入価格5517万円)の場合、赤で表示した。そして、80㎡の新築住戸が予算に収まる場合を黄色で示したが、小田急線では新宿から28駅の小田急相模原まで進む必要がある。参考価格でも75.33㎡が4,596万円(80㎡換算で4880万円)で販売されている「ライフレビュー新百合ヶ丘」の最寄り駅である新百合ヶ丘が精いっぱいだ(ただしこのマンションには76.8㎡以上の間取りはない)。

 

以上の仮定は、あくまで「新築」にこだわった場合だ。中古マンションでも許容できるなら、参考価格ベースでは登戸まで近づく。表では80㎡の中古マンションを予算内で買える場合を青で示したが、町田や相模大野といった利便性の高い駅も選択肢に入ることがわかる。

 

■JR中央・総武線でも中古に訴求力あり

 

近年供給される新築マンションは用地費や建築費が上昇しており、販売価格は高止まりの状態だ。不動産経済研究所によれば、首都圏の新築マンションの平均価格は、2010年に4716万円だったのが2019年には5980万円まで上昇した。相対的に割安な中古マンションの訴求力は、いやが上にも高まっている。

 

同じく中古の優位性がにじんだのがJR中央・総武線だ。価格高騰を象徴するかのように、新築マンションでは予算オーバーの駅が続く。ようやく予算内に収まるのが、新宿から18駅を数えた豊田だ。なお、参考価格ではあるが、三菱地所が分譲している西国分寺駅から徒歩10分の「ザ・パークハウス 国分寺四季の杜」では、記事執筆時点で70.72㎡の住戸が5321万円で販売されている。

 

80㎡の住戸を求めると、そこからさらに1駅奥に進んだ八王子が該当する。新宿から中央特快に乗っても約40分と、昨今の都心ニーズからはやや外れる。他方で、検討対象を中古にも広げれば、選択肢は一気に武蔵境にまで近づく。検討対象の駅だけでなく、分譲中・売り出し中住戸の数もぐんと増える。

 

■東急東横線の新築で予算内はゼロ

 

東急東横線に至っては、新築だけを検討対象にすると、予算内に収まる駅が一つも該当しなかった。対照的に、中古であれば日吉や菊名といった交通利便性の高い駅も選択肢に入る。人気の沿線を望むなら、中古は検討対象として外せないようだ。実際、大手マンションデベロッパー7社で構成する「メジャー7」が2018年に行った調査によれば、マンション購入検討者の43%が、新築だけでなく中古も検討対象としていた。

 

価格に影響を与えるのは、新築か中古かだけではない。急行が止まるか、複数路線が利用できるかといった「駅力」も重要な要素だ。

 

「駅力」によって価格に差が出たのは田園都市線だ。新築でも予算内に収まる駅は複数あるものの、急行停車駅にこだわるなら、渋谷から21駅の長津田まで広げる必要がある。逆に普通列車しか止まらない駅でも構わないのであれば、都心からさほど離れずにマンションを買うことができる。

 

■新築には広い住戸がない

 

今回はJR山手線から延びるJR中央・総武線と私鉄数路線を検証した。結果としては、新築にこだわると現在住んでいる場所よりも都心から離れざるをえない。他方で、駅力にこだわらず、中古も選択肢に入れれば、新築検討時よりもむしろ都心に近い場所でもマンションが買える。今回は築9~11年のマンションを対象に集計したが、築年数がより古いマンションであれば、さらに都心に近づくことも可能だ。

 

そもそも、現在分譲されている新築マンションには80㎡以上の住戸自体が存在しないこともある。前述のとおり、新築価格が上昇する一方で、購入検討者の予算は伸びていない。するとデベロッパーとしては、住戸の面積を削ることで販売価格の総額を抑えることになる。総額が大きくなる80㎡の住戸は予算に収まる買い手が限定されるため、デベロッパーとしては供給に慎重になる。

 

冒頭で示した小田急小田原線では、新築80㎡が購入できる駅で「小田急相模原」を挙げた。だが実際には、駅徒歩圏内で分譲されている「レーベン小田急相模原Vuitoa」での最も広い住戸は、現在の販売期では73.87㎡だ。

 

仮に広い住戸があったとしても、「プレミアム」扱いとして価格が上乗せされているマンションが少なくない。本稿で示した駅別価格はあくまで平均価格を㎡当たりの価格で割り戻している。実際の販売価格には軽重があり、プレミアム住戸は予算内に収まらない可能性が高い。

 

たとえば、関電不動産開発が田園都市線の宮崎台駅から徒歩10分の場所で分譲している「シエリア宮崎台」。記事執筆時点では70㎡の住戸が3998万円で販売されており、80㎡換算で4500万円台と、同駅における平均価格よりもお買い得だ。

 

だが、間取り図を見ると80㎡超の住戸はいずれも角部屋に設定されている。採光や眺望に優れる角部屋はほかの住戸よりも価格が高く設定されていることが多い。実際、85㎡台の住戸の販売価格は6546万円で、80㎡換算では6160万円と予算オーバーになる。

 

■広さがダメなら部屋数で勝負

 

在宅勤務の普及により広い住戸が求められるようになると、広さも供給も絞るという新築マンションの戦略は顧客に受け入れられなくなる。そこでデベロッパーは「部屋数」を増やしたりことで対応する。三菱地所は大人1人が入れる木製の「箱の間」を、自社分譲マンションを対象に展開する。リフォームなしで部屋数を増やすことができる。

 

大規模マンションでは、 共用施設のラウンジやスタディルームを書斎代わりにしている物件もある。予算の制約で住戸を広げられない中では、住戸内の部屋数や自由に使える共用施設をどう増やしていくかが、アフターコロナのマンション業界を勝ち抜くカギとなりそうだ。

 

一井 純 :東洋経済 記者

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/7955fe1ada63d69b10fc6701313d5f938b075554?page=1