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入居待ち6500人! デンマーク発のコンテナ住宅が熱望される理由

 “ヒュッゲ”と呼ばれる居心地の良い暮らしの時間を大切にする文化が根付き、幸福度の高い国として知られるデンマーク。

 新型コロナウイルスへの対応では、現在42歳のフレデリクセン首相が力強く指揮を執り、休業補償とのセットで、休校・ロックダウン・国境封鎖と素早い措置が行われた結果、4月初旬現在、デンマークの入院患者数はゆるやかに減少傾向にある。

 そんなデンマークの首都コペンハーゲンに、6500人もの学生が入居待ちをしている大人気の賃貸住宅が存在する。通常、輸出、輸入の貨物を運ぶために利用される箱型のコンテナを使った集合住宅だ。このコンテナ住宅の最大の特徴は、家の形状を保ったまま別の土地に引っ越しができること。これにより、物価の高いコペンハーゲンで低価格の賃貸を実現できたという。

 このコンテナ住宅を手掛けるデンマークのスタートアップ「CPH Village」のCEO Frederik Noltenius氏(37歳)に、ビジネスモデルと人気の理由を聞いた。

一時的に未使用な土地を活用した「コミュニティー型ヴィレッジ」

――まずは御社のビジネスモデルを教えてください。

 私たちはコペンハーゲン市内の大学に通う学生に向けて、輸送用コンテナを活用した低価格で賃貸できる集合住宅を提供しています。コペンハーゲンでは、個室を伴う住宅を借りる場合の家賃が月平均で5500クローネ(約8万7000円)かかるのですが、私たちが提供するコンテナ住宅は、4180クローネ(約6万6000円)に抑えられています。

 住民は小型キッチン付きの12平方メートル(約7畳)の個室を持ち、トイレとバスは他の住民と共有しています。個室は決して広くはないものの、住民同士が交流できる広いコミュニティースペースを併設することで、窮屈に感じさせないよう配慮しています。

 また、単純に住宅だけを提供するのではなく、住民同士が心地よく空間を共有できるようにコミュニティー運営のサポートも行っていますね。

 

コンテナに目を付けた背景

――マンションや一軒家を複数人で共有することで家賃を下げる「シェアハウス」とコンセプトは近いと思うのですが、なぜ住宅にコンテナを採用し、移動させる必要があるのでしょうか?

 私たちが移動可能なコンテナに目を付けた背景には、コペンハーゲンの都市化の問題があります。都市に人口が集中しているため住宅コストは上昇し、多くの人は給料の多くを家賃にあてている。また、現代のコンクリートを使った建築方法は、環境保護の観点から見ても持続可能とは言えない。その上、都市に住む人々は、幸せよりも孤独やストレスを感じているという調査結果がある。この問題は今後数十年でますます大きくなるでしょう。

 このような背景がある中で、私たちはコペンハーゲンで手頃な価格の学生用住宅が不足しているという大きな課題を知りました。物価の高いこの地では、手頃な学生用住宅が約2万2000戸も不足している。さらにスウェーデンでは約30万戸、ヨーロッパ全体では約400万戸が足りていない。とはいえ、中心地に近い場所に住宅を建てれば、コスト増はまぬがれない。

 何か良い方法はないかと模索していたところ見つけたのが、5年や10年などの一定期間、使用予定がない土地の存在。コペンハーゲンを中心に点在するこれらの土地は、近い将来に開発が決まっていますが、現状は使用されず空き地になっています。

 地図上の赤い点が該当する土地で、いずれもコペンハーゲンの中心地に近く、利便性が良い人気のエリアです。しかも、未使用の期間は格安で借りられる。だから、建築した住宅を取り壊さずに移動できれば、この場所を有効活用できる。その考えに基づいてたどり着いたのが輸送用コンテナでした。

 中古のコンテナをリサイクルすれば環境保護につながる上に、土地が安いぶん、家賃を抑えられる。コミュニティーを作り孤独を防ぐことで、住民の幸福度も高められる。そして、土地の使用期限がきたらコンテナ住宅を大型トラックに乗せて、跡形を残さず別の土地に移動できる。これが私たちのビジネスモデルのカギであり、持続可能なライフスタイルのアイデアです。

 

プロトタイプを作り、法改正を求める

――家をそのまま動かすとは、ユニークなビジネスアイデアですね。ぜひ起業ストーリーについても聞かせてください。「CPH Village」は、どのように立ち上がったのでしょうか?

 当社は、私と共同経営者のMichael Plesnerの2人で立ち上げました。私たちは共通して政治学のバックグラウンドを持っており、これまで大企業や非営利団体で「持続可能性」をキーワードにさまざまな事業に携わってきました。特に大企業で感じたのは「持続可能性」の観点で見ると、そもそもスタートポイントが間違っているということ。すでにあるプロダクト、ビジネスモデルともに、この先何十年も継続できるとは到底思えませんでした。

 間違ったスタートポイントから始めたものを起動修正するのは難しい。私たちは、そういった企業のサービスやビジネスモデルを持続可能なものに変えたいという同じパッションを持っていたことから、2014年に起業に至りました。現在も経営は2人で行っています。

――斬新なビジネスアイデアを現実にする過程で、苦労したことはありますか?

 誰もやったことがない事業ですから、プロトタイプ製作は時間をかけて慎重に進めました。安全性に考慮するため何度もテストを重ねて、最終的に最長で40年間の連続利用が可能なコンテナ住宅のプロトタイプが完成しました。

 さらに、私たちはにはもう一つやるべきことがありました。前代未聞のビジネスを始めるには、法律を変える必要があったんです。私たちはデンマーク議会に出向き、デンマークの学生用住宅不足の危機を救うソリューションとして、法改正を求めました。結果的に3年の月日を費やしましたが、ビジネス大臣の提案を通じて可決されました。

オープン後に応募が殺到、現在6500人待ち

――政治学のバックグラウンドを生かして、大胆なアプローチを成功させたのですね。その後は、どのように事業をスケールしてきたのでしょうか?

 17年から本格的に住宅建設をスタートさせ、18年に私たちの初のプロジェクトである「CPH VILLAGE」がオープンしました。これは、全部で168戸のコンテナ住宅を持つ村で、海沿いで眺めが良くコペンハーゲンの中心地に30分以内でアクセスできる好立地です。

 起業当初から自社のWebサイトのほか、Instagramを活用してPRを行ってきたところ、「CPH VILLAGE」が建設中の段階からマスコミからの取材依頼もいくつかあり、オープン後には応募が殺到、現在6500人がウェイティングリストに登録しています。

 20年現在は、スウェーデンのマルメという都市にも私たちの村を建設しています。ここは森林に囲まれた立地であることから、住宅はコンテナのサイズ感を維持しつつも材料には木材を利用しています。その土地にマッチしたベストな材料、ベストなデザインを模索しながら、持続可能なライフスタイルを追求しています。

 「CPH VILLAGE」での経験に基づいた改善を加えながら、人生のビジョンを共有し、より豊かに生きられるようなコミュニティーを育てる予定です。

 

住民満足度90%! 若い世代を魅了

――「CPH VILLAGE」が若い学生たちから反響を得ているのは、なぜだと思いますか?

 私たちが住民に提供しているのは、「スペース」「サービス」「コミュニティー」の3つで、これらの相互作用が評価されている理由だと思います。

 コンテナ住宅は、個人で自由に使える面積は限られているもののDIYがしやすい仕様にしているため、住民たちは好みの家具を置き、思い思いの装飾を施して、小さなスペースを有効活用しています。

 家賃が安いからといってサービスの質を落とすことはありません。コンテナ住宅は断熱材、窓、換気システムなど、従来の住宅と変わらない設備を持っています。唯一異なるのは家そのものを移動できることだけ。また、余計なモノを所有せずに済むようにプリンターやDIY用の道具類、掃除機などは運営側で用意し、住民同士でシェアすることで利便性を高めています。

 コミュニティー運営も私たちが注力しているポイントで、住民たちと一緒に計画しながら村の外観デザインを作ったり、交流が生まれるようなイベントを催したりしています。

 住民が自主的に主催するコミュニティーディナーも不定期で開催されており、これは交流促進だけでなく、環境保護の面でも良い取り組みです。168人が個別で食事をするのに比べてエネルギーが削減できるし、フードロスにもつながるかもしれません。

 住民への満足度アンケートでは、10点中9点という好評価を得ていて、「コミュニティーでの出会いや空間が気に入っている」「ロケーションが最高」といったコメントが寄せられています。

 また、同時に住宅の機能性に関しても住民へのヒアリングを通じて、データを蓄積しています。住宅業界では建設と不動産の分野が切り離されていて、消費者のデータを十分に蓄積できていない課題があるからです。何が効率的に機能していて、何が機能していないかを知ることで、よりムダがなく住みやすい住宅に改善したいと思っています。

 

都市で持続可能なライフスタイルを

――これから事業を拡大させていくために、どんな戦略を考えていますか?

 ひとまず22年末までを目標に、スカンジナビア全体に10の村を作り、合計2500戸の学生用住宅を建設する具体的な計画を進めています。これが成功したら、私たちは国際的にビジネスをスケールさせる可能性を持つ企業に成長するでしょう。

 23年以降も引き続き住宅の建設を続け、世界中にデンマークに根付く“ヒュッゲ”(人と人との触れ合いから生まれる、穏やかで居心地の良い雰囲気を指す)を体現するような100万戸の住宅建設を目標としています。

 もし将来、住宅としての需要がなくなった場合でも、柔軟性のある建物であることから、高齢者施設、住宅のリノベーション中に一時的に住める仮住宅、一時的な幼稚園や学校、オフィス、ホテル、カフェやレストラン、イベントスペースなど、さまざまな用途に活用できるはずです。

 従来の住宅や施設に比べて短期間で完成する上に、用途に応じて戸数を増やしたり、減らしたりできる。さらに、一度建てたものを取り壊すことなく別の場所に移動できる。これらのメリットは建設業界・不動産業界にとって大きなインパクトであり、都市での持続可能なライフスタイルを確立する助けになると信じています。

(小林香織)

ITmedia ビジネスオンライン

 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200423-00000033-zdn_mkt-int&p=1