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空き家対策の第一歩? 使わない土地の売却に税優遇

2020年度(令和2年度)税制改正大綱が19年末に発表されました。不動産に関する税制改正では、空き家対策の側面から、長年放置されている空き地や空き家の敷地など低未利用土地を譲渡した場合に、譲渡所得から一定額を控除できる特例や、住まいを譲渡した場合の各種特例と住宅ローン控除の併用ができなくなる措置などが盛り込まれました。詳細について明らかになっていない部分もありますが、不動産に関係する改正ポイントについて、税理士法人アイアセット代表税理士の石井力さんに伺ってみました。

◇ ◇ ◇

20年度の不動産に関係する税制改正大綱のうち主なものは、
(1)低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除制度の創設
(2)住まいを譲渡した場合の各種特例と住宅ローン控除の重複適用の取りやめ
(3)国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例の創設
(4)居住用賃貸建物の取得等に係る仕入れ税額控除制度等の適正化

となっていますが、それぞれの改正のポイントについて簡単に教えてください。

(1)低未利用土地等の売却に優遇策

【田中】まず、低未利用土地等を譲渡した場合の特別控除制度です。低未利用土地というと長年放置されている空き地や空き家の敷地などを想像しますが、どんな内容なのでしょうか。

【石井税理士】低未利用土地等であることについて、市区町村の長の確認がなされたもので、譲渡する年の1月1日において所有期間が5年を超える場合、一定の条件を満たすものについては、譲渡所得の金額から100万円を上限に控除することができるようになります。ただし、譲渡価格が500万円を超えるものは除かれます。

【田中】低未利用土地等というのは具体的な規定があるのでしょうか?

【石井税理士】土地基本法等の一部を改正する法律(仮称)の内容がまだ明確ではありませんので、現時点でははっきりしていません。この特例は、譲渡後の低未利用土地等の利用についても、市区町村の長の確認が必要とされていますので、低未利用土地等のままの状態で保有する所有者から、一定の利用を行う予定のある者への譲渡に限って優遇したい、すなわち低未利用土地等の有効活用を推進したいという考えが背後にあるのでしょう。この特例は、土地基本法等の一部を改正する法律の施行の日、または20年7月1日のいずれか遅い日から、22年12月31日までの間の特例となります。

【田中】譲渡価格の上限が500万円となると、大都市圏では適用しにくい規定となりそうですし、控除額が100万円ということは税額で20万円程度の削減効果しか見込めませんから、あまりインパクトのある制度ではなさそうですね。

 

(2)自宅売却の特例と住宅ローン控除の重

【田中】住まいを買い換える際、これまでも、住まいを売却した場合の3000万円控除の特例(譲渡益から最大3000万円控除できる特例)と住宅ローン控除は併用できないことになっていたと思うのですが、今回の改正の意図は何なのでしょうか?

【石井税理士】 住まいを譲渡した場合、3000万円控除など居住用財産の譲渡の特例を受けるには、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡することが条件となっています。一方、住宅ローン控除の適用を受けるには、控除を適用する年およびその前後2年以内は3000万円控除等居住用財産の譲渡の特例の適用を受けないことが条件となっていました。

つまり、住まいの買い換えを同時に行わず、先に新居を購入して住宅ローン控除を利用しつつ、新居に移った日(従前の住まいに住まなくなった日)から3年を経過する日の属する年の1月1日から12月31日までの間に、従前の住まいを売れば、3000万円控除などの特例を利用することが合法的にできたのです。今回の改正はこうした穴をふさぐものとなっています。20年4月1日以後に従前の住まいを譲渡する場合に適用されます。

(3)海外不動産所得の損益通算に新ルール

【田中】 建物の耐用年数を超えた国外の投資用不動産を購入することで節税効果を高めることができるという、国内富裕層向けセールストークが多く見受けられました。海外の不動産は土地よりも建物価値が高いですし、木造建物なら耐用年数22年を超えていれば、償却期間4年で減価償却できるのです。償却費で不動産所得を赤字にして給与所得などと損益通算することで高い節税効果が得られると言われています。今回の改正でこの恩恵が受けられなくなるということでしょうか。

【石井税理士】 その通りです。これまでは国外で取得した中古建物から生じる不動産所得がある場合、その年分の不動産所得の計算上、国外不動産所得に損失がある場合(つまり減価償却費が大きく損失が生じる場合)、給与所得などと損益通算することができ、課税所得を圧縮できました。しかし今回の改正で、国外中古建物の償却費に相当する部分は損益通算できないことになります。21年以後はこの改正施行となります。

(4)賃貸用物件の購入にかかる消費税還付はNG

【田中】 これは建築会社による地主向けの賃貸住宅建築の提案でよく見かけられた、建物取得にかかる消費税還付のお話でしょうか?

【石井税理士】 そうですね。細かい手法についての説明はいたしませんが、居住用賃貸建物(厳密には、住宅の貸し付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物で高額特定資産に該当するもの)については、今回の改正で仕入税額控除制度の適用が認められないことになります。

消費税がかかる売り上げを課税売り上げといいます。課税売り上げがある場合、その売り上げにかかる消費税から、仕入にかかる消費税(この場合は居住用賃貸建物の消費税)を控除し、差額を消費税として国に納めるわけです。これを「仕入税額控除」といいます。

賃貸建物の場合、建物の購入や新築などには消費税が含まれているので、仕入れにかかる消費税が発生するのですが、売り上げである家賃には消費税をかけることができません。このため、仕入れにかかる消費税を地主が負担せざるを得ないのです。

そこで、一部の人はわざわざ消費税がかかる売り上げ(課税売り上げ)を作り出して仕入税額控除を受けていたのです。例えば、金そのものの売買には消費税がかかるので、金の売買を繰り返すことで強引に課税売り上げを立て、居住用賃貸建物にかかる消費税の還付を受けるという手法が一部で横行していたのです。

【田中】 たしかに、こうした提案を受けている人を多く見てきましたが、この手法については、いつか国税当局から指摘を受けてもおかしくないという声が税理士などの専門家からも多く聞かれました。消費税還付を受けることを前提に賃貸事業の収支が黒字になるような提案が散見されましたので、これを見込んで建築会社と建築のための請負契約を締結してしまった場合、大変なことになりそうですね。

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今回の不動産に関する税制改正大綱を概観すると、低未利用土地等の特例以外は、法律の抜け穴をふさぐという意図が強く出ているように感じられます。また、いずれも一定の所得や資産がある一部の人が受けることができた恩恵をシャットアウトしたという形になっているようです。社会保障を中心とした歳出増を賄う必要性がますます高まる中、不動産流通を阻害しない範囲で課税を強化する、税法の穴をふさぐという動きは今後も続くのでしょうね。


田中歩

1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。

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