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2012.11.01 マンション管理費見直しセンターのホームページを公開しました。

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東京都下の某タワーマンションを襲った「手抜き工事」の悲劇

鉄筋コンクリートの耐久年数は

 

 多くの人は、マンションを多少なりとも華やかな存在だと考えている。新築マンションの派手な広告に接する機会が多いからかもしれない。

 しかし、マンションとは、しょせんは鉄筋コンクリートで作られた構造体にすぎない。そして、鉄筋コンクリート造の建物はかなり頑丈だ。1981年の建築基準法改正以降に、建築確認を取って建てられた新耐震基準のマンションは、大きな地震でも致命的な被害を受けた例がほぼない。

 それほどに頑丈な鉄筋コンクリート造のマンションでも、老朽化は避けられない。その耐用年数は100年とも200年とも言われるが、実際のところは、よくわからない。というのは、人類は今まで100年以上の使用に耐えた鉄筋コンクリート造の集合住宅を、ほぼ知らないからだ。

 過去には、約80年の使用に耐えた同潤会アパートという集合住宅があった。しかし、それもすべて建て直しになってしまった。日本でもっとも古い分譲マンションであった四ツ谷コーポラス(1956年築)も、建て替えられている。

 フランスのパリでは、築200年のアパートが今も現役であったり、イタリアではローマ時代の集合住宅が現在も使われていたりするという。しかし、そういったものはすべて石造りだ。鉄筋コンクリート造ではない。

鉄筋コンクリート造では、鉄筋の回りをコンクリートで固めて強度を持たせている。ただ、鉄は必ず錆びる。錆びると体積を膨張させる。そして、回りのコンクリートを破裂させる。鉄筋を錆びさせないために、コンクリートにひびが入ると、こまめに補修しなければならない。

 しかし、そうしたところでいずれ鉄筋コンクリートには必ずや寿命が来る。施工精度が悪ければ数十年。こまめに補修しても200年もつだろうか。

 すべてのマンションは、いずれ寿命が尽きてしまうのだ。つまり、マンションが華やかであるのは、新築販売時に巨額の宣伝費をかけて広告をしているあいだと、新居に引っ越してきて、喜びを隠せない人々が気分を高ぶらせている最初の数年だけ。あとは、何十年にもわたって老朽化と戦い続けなければならないのだ。

築1年」で地震の被害に

 

 鉄筋コンクリート造のマンションが、何年でどれくらい老朽化するのか、決まった法則性はない。これはどんなコンクリートを使い、どのように工事をしたかという施工精度が大きくかかわってくるからだ。

 しかし、施工精度というものは、外からの目視ではまったくわからない。華やかなタワーマンションでも、じつは手抜き工事まがいの施工がおこなわれていたりする。

 典型的なケースをご紹介しよう。

 東京都下でもかなり人気の高い駅から徒歩3分の場所に、きらびやかなツインタワーが完成したのは2010年の初春だった。新築時の広告コピーは、例の如く「武蔵野を見下ろす暮らし」みたいな感じだったと記憶している。

 武蔵野は見下ろして楽しいものではなく、国木田独歩のように逍遥するものかと思っていたので、かなりの違和感が残る広告だった。もっとも、今の武蔵野エリアには逍遥するほどの場所はほとんど残っていない。

 建物が完成したその翌年の3月11日に、東日本大震災が起きた。

そして建物内部の共用施設がかなり損傷した。まだ新築1年である。区分所有者たちは、当然の如く怒りをたぎらせる。

 「これは売り主の責任だ。売り主責任で補修せよ」

 そういう要求が出てきても当然だ。売り主はそれを受けて、施工会社に、「お前のところで補修費を負担せよ」と要求する。その流れで、施工会社は被害状況の調査にやってきた。彼らは損傷箇所をチェックした。そして……。

 「これらはすべて地震によるものであり、当社の責任ではありません」

 そう言うと、後日、1億数千万円の補修工事見積書を管理組合に提出した。

 近隣のマンションは、築10年でも築30年でも、さほどの損傷は出ていなかった。なぜに築1年のこのツインタワーが、これほどの損傷を受けたのか。区分所有者たちは納得できない。しかし、施工したゼネコンの欠陥工事を証明することもできない。

 最終的には1戸につき、約30万円から50万円の一時金を徴収することで、その施工業者に補修工事を依頼せざるを得なかった。

ほとんどの人は「泣き寝入り」

 

 傍で見ていても、なんとも噴飯ものの話である。じつはまだ続きがある。

 2017年、わりあい強い台風が東京を通過した。ただ、死者が出るほどの被害ではなかったかと記憶している。そのとき、私が見ていたSNSに「○○駅前で、ビルからタイルが崩落」というようなタイトルで動画が流れてきた。そのビルの2階と3階のあいだの外壁に張られていたタイルがほぼすべて、バラバラと歩道へと崩落していたのだ。

 幸いにして、けが人などは出なかった。先に何枚かタイルが剥落していたので、その歩道部分は立ち入り禁止になっていたという。仮に立ち入り禁止でなかったら、死者が出た可能性さえある。

 そのビルとは、ほかでもない例のツインタワーである。駅に近いので、3階部分までは商業施設が入っていたのだ。

 その時点で、たしか築6年であった。築6年で外壁タイルがバラバラと崩落するなど、普通では考えられない。明らかに施工不良である。しかし、決定的な証拠でもないかぎり、法的な責任は問えないのだろう。その事故が、その後どう処理されたのかはわからない。

そのツインタワーを施工したゼネコンは、何年か前に発覚した「杭が支持基盤に達してなかった」という横浜の大規模マンションを施工した会社と同一である。

 そのツインタワーが施工不良の物件であることは、不動産業界では、ある程度周知されている。しかし、一般にはほとんど知られていない。報道されないからだ。

 2015年10月、横浜市都筑区のマンションで、建物を支える支持杭が建築基準法で定められた強固な地盤に達していないことが発覚した。杭の工事を請け負った会社が、杭打ち工事の一部作業データを偽装していたのだ。

 入居後数年で、4棟のうち1棟で傾きが発生。「別棟への渡り廊下の手すりがずれている」という住人の訴えで調査が行われ、建物片側の手すりが2.4センチ、床面が1.5センチ低くなっていたことがわかった。傾いた棟にある計52本の杭のうち28本を調べたところ、支持基盤に達していない杭が6本あり、長さ不足の杭が2本あることが判明。

 管理組合と元の売主が協議を続けた結果、すべての住棟を売主費用で建て替えることが決定。仮住まいや引っ越し費用なども売主負担となった。

 この事件は、連日のようにワイドショーを騒がせたが、ああいうケースはかなり稀だと言っていい。大部分の施工不良は、例のツインタワーのように、管理組合が泣く泣く自腹を切って補修を続けている。なぜか? 
 施工不良であることを世間に知られてしまうと、そのマンションの資産価値が下がるからである。区分所有者にとって、それがもっとも困ることなのだ。

榊 淳司

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190404-00063668-gendaibiz-bus_all&p=1