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2012.11.01 マンション管理費見直しセンターのホームページを公開しました。

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関西都心部でタワマンが急増、小学校不足は解消できるか

タワーマンションなど大規模マンションの建設が進む関西の都心部で小学校の児童が急増し、地方自治体が対応に追われている。住民の都心回帰の動きが子育て世代を中心に加速しているためで、大阪市が2018年度当初予算案に校舎の高層化を盛り込んだほか、神戸市は校舎増築と越境入学、京都市は小学校新設で対応する方針。これに対し、西宮市は児童急増地区のマンション建築自体を規制し、教育環境の維持に努めている。同志社大社会学部の鰺坂学教授(地域社会学)は「都心回帰の動きはあと5~10年くらい続く」とみている。急激な人口移動に振り回され、関西の自治体は頭を悩ませる一方だ。

●大阪市は校舎の高層化を2018年度当初予算案に計上



 休み時間になると待ちかねたように児童が教室から運動場へ飛び出してくる。約2,600平方メートルとそれほど広くない運動場は、すぐに児童でいっぱいに。大阪市西区の西船場小学校。市内でも児童が最も急増している学校の1つに数えられる。





 全校児童は2017年度で500人を超えた。2011年度の282人に比べ、倍近い急増ぶりだ。2014年度に校舎を増築したが、すぐ満杯になった。運動場も学年ごとに交代で使用するルールを定めたものの、それも限界に来ようとしている。



 2022年度には全校児童が今より400人以上増えて950人を超し、11教室が不足する見込み。市教委は敷地内にある西船場幼稚園を廃園にし、校舎を増築することを住民らの反対を押し切って決めた。市教委施設整備課は「運動場を減らせず、増築場所が他にない」と苦しい胸の内を打ち明ける。





 市内で児童が急増しているのは、西船場小学校だけでない。都心部の北区、中央区、西区では8割の小学校が5年後に教室不足になる見通し。2022年度の児童数が現在の倍近くまで膨れ上がりそうな小学校は1つや2つではない。



 市の人口は2月現在271万人で、緩やかな増加傾向にある。これに対し、児童数は11万4,000人で、ピーク時の1958年に比べて3分の1以下になるなど減少傾向が続く。それにもかかわらず、都心部で教室不足になるのは子育て世代の都心回帰が続いているからだ。それを裏付けるようにここ数年、北、中央、西の3区は人口が急増している。





 このため、市は吉村洋文市長をトップに据えた組織横断型のプロジェクトチームを編成、対応策を検討してきた。その結果、浮上したのが校舎の高層化で、2018年度当初予算案に設計など関連事業費約15億円を計上した。



 高層化の設計を進めるのは、中央区の開平小学校。ほかに中央区の玉造小学校で新校舎の設計、北区の西天満、大淀、扇町、西区の西船場、堀江、中央区の中大江の6校で増築を進める。吉村市長は記者会見で「今後も北区にある高校跡地を活用するなど児童急増エリアの教育環境確保に全力を挙げたい」と決意を示した。



●関西のマンション建設、首都圏を上回る伸び率



 都心回帰の動きを加速させている最大の要因が、都心部でのタワーマンションなど大規模マンションの建設ラッシュだ。不動産経済研究所大阪事務所によると、2017年に関西2府4県で発売されたマンションは1万9,560戸に上る。



 年間2万戸以上が発売されていた2010~2013年に比べると少ないが、対前年比4.7%の増。首都圏の0.4%増を上回る伸び率を記録した。うち、大阪府での発売分が1万3,097戸を占め、対前年比12.7%の伸びを示している。不動産経済研究所の笹原雪恵大阪事務所長は「場所は北区など都心部に集中している」と述べた。



 1月の関西マンション市場動向を見ても、新規発売物件に対する契約戸数の割合を示す契約率は前年同月比3.0ポイント増の78.1%。13カ月続けて好不調の目安とされる70%を超えた。



 大阪市中央区の「グランメゾン上町台ザ・タワー」初回売り出し166戸が月内完売したのをはじめ、2020年から入居予定の北区の「ブランズタワー梅田North」の売れ行きも好調。当分の間、今の勢いで都心回帰が続きそうだ。

●神戸市や京都市も都心部で児童が急増



 大阪市以外でも、都心回帰の動きが見られる。神戸市は中央区の三宮、元町地区の児童急増で、開発事業の事前協議を厳格化する条例を6月から施行する。これまでは市の要綱に基づき、住宅開発が決まった段階で業者と協議してきたが、事業区域の選定段階で協議を求め、早期に対策を講じられるようにする。



 市教委は児童受け入れに対策が必要な校区として中央区の4校など18校区を指定した。特に児童の増加が著しい中央区のこうべ小学校は780人の児童が数年後に1,000人近くになると試算されている。校庭に仮設校舎を建て、対応しているが、とても追いつきそうもない。このため、児童が希望すれば兵庫区内の小学校へ越境入学させることを決めた。





 市教委学校環境整備課は「新設の用地確保が困難で、区内の隣接校も児童の増加で校区再編が難しい」と対応に頭を抱えている。



 京都市は4月、上京区に26年ぶりの新設校となる御所東小学校を開校する。直線距離で400メートル離れた中京区の御所南小学校は、1995年度に662人だった児童数が2017年度、1,252人まで増え、仮設校舎で対応している。児童約300人が御所南小学校から移る予定だ。



 市内は景観規制でタワーマンション建設が制限されているが、京都御所に近い御所南エリアは分譲マンション建設が進み、子育て世代の人気を集めている。市教委総務課は「統廃合した小学校跡地を公共目的で使用していたため、新設に対応できたが、人口の急激な移動に振り回されている感じだ」と語った。



 関西きってのベッドタウンとして人口が急増中の兵庫県西宮市は、条例で大規模マンションの建設を規制する地区を公表している。現在は西宮北口や夙川に近い桜谷町の大社小学校が受入困難地区に指定されている。



 市教委学校施設計画課は「西宮市に暮らしたい人が多いのはありがたいが、児童の教育環境を守るため、建設規制はやむを得ない」と説明する。



●20年、30年後も見据えて求められる対応



 だが、都心への人口流入も日本全体の少子化と人口減少に歯止めがかからなければ、やがてストップする。大阪市でも生野区の御幸森小学校で過疎地域並みのたった6人しか児童がいない学年があるなど、統廃合に踏み切らざるを得ない地域が少なくない。



 児童の急増が見られるのは、大阪、神戸、京都3市の都心部と西宮市など一部のベッドタウンに限られ、児童の減少に悩む地域の方が多い。20年、30年の長期で考えると、新設、増築した校舎が再び、不要になることも想定できる。



 鯵坂教授は「急激な人口増加をもたらす大規模マンションの建設には、ある程度のコントロールが必要だろう。さらに、20年後を見据え、増設する校舎を他用途に転用可能な空間とすべきでないか」と提言する。



 短期、中期の人口移動を予測することはできても、長期となると難しい。児童の教育環境を悪化させず、将来に無駄な施設を残さないためにどうすればいいのか、自治体の知恵が問われている。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

 

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180308-00034672-biz_plus-bus_all&p=1