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2018年の不動産市況、悲観的予想は「取り越し苦労」か

オフィスビルの「2018年問題」は杞憂

 

 2018年の不動産市場について、経済誌などでは悲観的な予想が目立つ。オフィスビルは大量供給によって空室が急増、バブル期超えした地価は大暴落、といった見方が多いが、いずれも「取り越し苦労」と思われる。ただし悲観的な予想にも一定の根拠があり、かく乱要因が多い点が2018年の市況の特徴と言えそうだ。

 不動産会社を対象に3カ月ごとに実施されているアンケート調査によれば、「ビル賃貸業」の業況指数は14期連続のプラス水準だった。この数値が示す通り、現在のオフィスビル市場は好調と言える。東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の平均空室率は2017年11月末時点で3.03%となり、中期的には(足元の短期的な変動を除くと)、2008年3月末(2.89%)以来の低水準で推移している(三鬼商事調べ)。空室のあるビルの比率は22.98%に過ぎず、中期的には2008年4月(22.55%)以来の低水準となった。

 しかし景況感調査では、「ビル賃貸業」の「3カ月後の経営の見通し」は▲2.1ポイントと、マイナス水準になっている。2018年は、東京23区で供給される大規模ビルの床面積が、前年の2倍近くに増加する見込みである。このため「2018年からビル市況が悪化する」と予想する事業者が多い。しかし、この「2018年問題」の懸念も「取り越し苦労」と思われる。

 東京23区では、2018年と2020年にビル供給量の増加が予想されているが、過去の供給実績と比べると、「大量供給」というほどではない。2017年~2021年の5年間の供給見込みは年間103万平方メートルで、過去30年間の供給ペースとほぼ同水準である。また、2008~2020年の供給計画の立地場所を見ると、ビジネス街としては「一等地」とされる丸の内・大手町が26%を占めるなど、オフィス需要が強いエリアが中心となっている。都心部のビル供給は、既存ビルの建て替えが中心であるため、床面積の純増(ネット)は、表面的な供給量(グロス)の4割以下にとどまる。

 一方、需要面についても、主要シンクタンクによる景気予想では、2017年度の実質GDP(国内総生産)成長率は1%台後半、2018年度は1%台半ばとの見方が多く、緩やかな景気回復が続く中で、オフィス需要も堅調と予想される。

 現在、東京都心部で2017年に竣工したオフィスビルの多くは80%以上の稼働率を達成しており、2018年に竣工予定のビルもメインテナントを確保した例が増えている。さらに2019年に完成予定のビルにも、早くも満室状態となった例が出始めている。このような状況を考慮すると、東京のオフィスビル市場で「2018年問題」が顕在化する可能性は低いと思われる。

 オフィスビル市場の好調は、東京だけにとどまらない。主要都市のオフィス空室率を見ると、大阪、札幌、仙台、福岡など多くの都市が過去最低水準となっている。2018年は、札幌と東京を除き、ビル供給量が低水準にとどまる見込みで、オフィス空室率は全国的に「底ばい」の状態が続くと予想される。

地価は横ばい傾向が強まる

 

 2017年は路線価(1月1日時点)や基準地価(7月1日時点)において、それぞれの最高価格地点(鳩居堂前、明治屋銀座ビル)の地価がバブル経済期のピークを超えた。このため「バブル崩壊の再現」を懸念する声も聞かれるが、やはり「取り越し苦労」だと思われる。

 確かに都心部では、地価の天井感が強まっている。東京23区・商業地の基準地価を見ると、2016年は不動産投資の活発化が地価を押し上げ、地価水準が高い場所ほど地価上昇率が高い傾向が見られた。しかし2017年は、地価水準が高い場所の上昇幅が縮小した(図表5)。

 オフィスビル賃貸事業が採算を確保するには、NOI(Net Operating Income、純収益)ベースで3.5%以上の利回りを確保する必要があると考えられる。NOIとは、賃料収入から管理コストなどを差し引いた金額である。この水準を下回る取引は、短期的な転売を目的とした「バブル」的な性格が強くなる。

 東京都心部の丸の内・大手町エリアの優良ビルに投資した場合の利回りは、2017年10月時点で3.2%に低下した(日本不動産研究所「不動産投資家調査」)。しかし、丸の内・大手町以外のエリアは、3.6%以上の利回りを確保している。不動産投資をさらに進めることは困難な状況だが、まだ「バブル」ではないと言える。また前述した通り、オフィスビル市場は堅調と予想されるため、都心部の地価が下落に転じる可能性は低いと考えられる。

 このような状況を考慮すると、2018年の公示地価(1月1日時点)における年間変動率は、全国・住宅地が0.0%程度(2017年調査では0.0%)、全国・商業地が1.0%程度(同1.4%)、東京圏・住宅地が0.5%程度(同0.7%)、東京圏・商業地が2.5%程度(同3.1%)と、上昇テンポが鈍化し、横ばい傾向が強まると予想される。

 2018年は、オリンピック開催に向けて整備が進む東京湾岸のエリアに対する注目が高まりそうだ。東京都は、選手村が設置される晴海を経由して、都心と臨海副都心を結ぶBRT(バス高速輸送システム)を2019年までに整備する計画を進めており、2015年9月に京成バスを運行事業者に決定した。都政の混乱によって、BRTが走る環状2号線の工事が大幅に遅れているが、2018年中には整備計画の進捗が期待される。

 晴海、豊洲、臨海副都心には相当のオフィスビルの集積が存在するが、これまではテナントの入退出が頻繁なビルが目立った。交通利便性に難点があることが一因と考えられる。今後は、交通インフラの整備によって、企業の定着率が高まると期待される。

 2018年は、本稿で取り上げた項目以外にも、金利上昇懸念、民泊新法(住宅宿泊事業法)の施行、北朝鮮問題など、不動産市況のかく乱要因が多い。仮に金利が上昇しても、小幅にとどまり、不動産事業への影響は軽微だろう。民泊制度が整備されるとホテル事業が圧迫されると見る向きが多いが、無許可の民泊に対する規制が強まり、民泊施設のストックが減少して、ホテル需要が拡大する可能性もある。いずれの懸念も「取り越し苦労」に終わりそうだが、流動的な要素も多く、市況の見極めが難しい年になりそうだ。

みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180105-00010000-nkbizgate-bus_all&p=1